トップメッセージ
創立120周年を迎え、新たに動き出したノリタケグループ。
ありたい姿の実現を目指して、挑戦を続けます。
社長就任にあたって
2024年1月1日、当社は創立120周年を迎えました。これもひとえに今日までノリタケグループを支えてくださったお客様、株主様をはじめ、様々なステークホルダーの皆さまのおかげであり、心より感謝を申し上げます。
私、東山明は、2024年4月1日付けで社長に就任いたしました。大変なスピードで世界が変動する今、当社グループも社会の変化に迅速に対応し、積極的に変革を進めていかねばなりません。
振り返れば、入社当初、私は混合攪拌装置などの設備を取り扱う仕事に携わりました。新規事業であったこともあり、学びながら仕事をする中、製造・販売・技術のすべてを担い、どんな時も「自分の仕事だ」と思って取り組んできました。新製品を考え、新たな市場を開拓することは多くの困難を伴いましたが、やり遂げた時には大きな喜びも感じることができました。
この「失敗を恐れず新たなことに挑戦する」という経験が今の私の基礎になっています。これまで培ってきたものを活かして、当社グループが成長し、社会に貢献する企業であり続けられるよう覚悟を持って取り組んでまいります。
さらなる成長に向けた変革を
ノリタケグループでは、今後の成長が期待される環境・エレクトロニクス・ウェルビーイングの3分野を成長領域と定めて「選択と集中」を進め、従来の基盤領域(内燃機関、窯業など)からの転換、事業ポートフォリオ改革を進めています。2023年度は、積層セラミックコンデンサ用電子材料、リチウムイオン電池用焼成炉の増産に向けた大型投資を決定しました。今後も「利益と投資の好循環」で、企業価値向上に繋げていきます。
当社グループが今後も成長を続けていくために、「さらなる成長に向けた変革」を進めていきたいと考えています。そのために、「スピードと変化への対応力の強化」、具体的には「会社のイノベーション」「新事業創出の種づくり」「組織風土改革」の3つの取り組みを推進します。
「スピードと変化への対応力の強化」を実現するための3つのキーワード
ノリタケグループをこれからも維持・発展させるには、世の中の変化に合わせて自らが変わっていかなければなりません。伝統は大事なものですが、一方で、自社のやり方に固執するあまり、世の中の変化への対応が遅れることに、大きな危機感を覚えています。そのため、まずは「会社のイノベーション」に取り組みます。活気のあるノリタケグループを目指し、従業員エンゲージメント向上のための働きやすい環境づくりとして、制度変更、施設や設備の更新、事業所の再編(ウェルネスファクトリー)など、今のノリタケに必要な施策を着実に進めていきます。
2つ目は、「新事業創出の種づくり」です。事業の開発段階から事業化まで、グループ全体の知見を結集させる組織横断の体制づくりと他企業や公的機関との連携など自前主義からの脱却の2つの軸で取り組みます。
従来、ノリタケでは、各事業や研究開発が縦割りで開発を行ってきましたが、従来の組織に囚われて仕事をしていては、革新的な新製品、新技術はなかなか生まれません。新製品を生み出すには社員一人ひとりが自発的な姿勢を持ち、その能力を最大限発揮することが必要不可欠です。そこで組織横断で適切な人材を集め、開発段階から製販技の知見を結集させて、最適なプロセスで新製品を生み出せる体制作りを始めました。新製品を世に出すまでには、5年、10年という期間が当たり前のようにかかります。様々なものにチャレンジし、将来性、成長性が期待できるものを選択しながら、順番に育てていく、という粘り強さが必要とされるでしょう。一方で、今の時代は何よりもスピードが求められますので、自前主義から脱却し、外部リソースとの連携なども活用して、開発スピードを上げ、時代のニーズを先取りするような取り組みを推進していきます。
3つ目は「組織風土改革」です。変化する社会に対応する会社を目指し、挑戦が評価される組織風土づくりを行っていきます。ノリタケは元来、穏やかな社風で、お客様の要望に誠意を持って応える会社です。このノリタケの良さを守りながらも、世の中が変化する中で、新しいことに挑戦しスピード感を持って進めていく人材を育てることが、会社の成長に繋がると信じており、まずは『チャレンジ』をキーワードとした新人事制度を導入しました。従業員が何かにチャレンジして失敗してもその姿勢を評価し、それぞれがその経験を自身の成長の糧としていくことで、会社が成長するという好循環を目指します。そして、従業員一人ひとりが今よりもさらに大きな夢を持てる会社に変えていきたいと考えています。
ノリタケがこれから進む道は決して平坦ではありませんが、この3つの取り組みを着実に進め、ノリタケの成長の原動力にしていきたいと考えています。
第12次中期経営計画(2022~2024年)について
2023年度の振り返りと事業概況
2023年度は国内では、経済活動の正常化に伴い、個⼈消費は緩やかに持ち直し、企業収益が改善する中で設備投資も底堅く推移するなど、景気は緩やかに回復しました。海外では、米国は高インフレを受け政策⾦利の引き上げが進んだものの、個⼈消費が好調を維持し、景気は拡大しました。中国は不動産市場の低迷に伴う影響により持ち直しの動きに⾜踏みがみられ、欧州は停滞しました。引き続き、国内は緩やかな回復が期待されますが、世界的な⾦融引き締めや米国大統領選挙の動向、中国経済の減速、ウクライナや中東情勢を巡る地政学リスクの⾼まりなど、依然として世界経済の先⾏きは不透明な状況にあります。
こうした情勢のもと、2023年度の当社グループの業績は、対前期⽐減収となったものの、利益率の改善と円安の効果などから増益となり、連結経常利益は過去最⾼を更新しました。しかしながら、第12次中期経営計画策定時には見通せなかった社会情勢の変化などの影響は大きく、各事業において計画通りに進まなかった部分も多くあり、世の中の変化にスピード感を持って対応していくことが極めて重要であると改めて認識しました。
第12次中期経営計画の進捗
2030年度に向けて、2022年度から2024年度までの3カ年を対象とする第12次中期経営計画は、「収益基盤の強化と成長領域への仕込み」の期間と位置付けています。「収益基盤の強化」として、不採算商品・事業の再編、収益改善・合理化を進め、「成長領域への仕込み」として、増産・拡販への対応、経営基盤の強化に取り組んでいます。
経営基盤の強化としては、「新事業の創出」「組織風土の改革」「サステナビリティ経営体制の整備」「DXの推進」の4つのテーマで、全社横断的な取り組みを進めています。
1.新事業の創出
新事業のテーマ探索を全社レベルで⾏うとともに、事業化プロセスを構築し、新事業の創出に結び付けます。
2023年度は、全社レベルでの開発テーマ探索を加速させるため、全従業員から広く開発テーマを募る開発テーマ提案制度と、事業化のための新たな開発プロセスであるステージゲート制度の運用を開始しました。また、新製品の開発、既存技術の用途開発や市場開拓のほか、オープンイノベーション推進体制の構築など、新事業の創出に向けた取り組みも進めました。今後は、開発テーマ提案制度を含む事業化プロセスの定着と改善を図るとともに、オープンイノベーション推進体制を整備し、スタートアップやパートナー企業など他社や公的機関との連携を強化することで、新事業の創出に向けた取り組みのスピードをさらに加速していきます。
2.組織風土の改革
2030年度の⻑期ビジョン(ありたい姿)に必要な組織風土を実現するため、人事制度の整備や働き方改革を推進し、従業員のチャレンジ精神の醸成とエンゲージメントの向上を図っています。
2023年度は⼈事制度を改定し、2024年4⽉から導入しました。新たな⼈事制度では、①挑戦を促す組織風土の醸成、②貢献に対して報いる仕組みの整備、③多様な⼈材の活躍推進を3本柱として掲げ、その実現に向けて、挑戦を促す評価制度への改定、優秀な人材の早期登用も可能とし、定年年齢の引き上げを実施しました。また、全従業員を対象にエンゲージメントサーベイを実施し、課題設定と施策立案への活用を開始しました。今後は、従業員のチャレンジ精神の醸成に向けて新人事制度の定着を図るとともに、働き方改革の推進などエンゲージメントの向上を図ります。
3.サステナビリティ経営体制の整備
持続可能な社会の実現に向けた社会課題の解決のため、サステナビリティ経営体制を整備し、カーボンニュートラルの実現、気候変動などのリスクへの対応をはじめとする様々な取り組みを進めています。
2023年4⽉にサステナビリティ統括委員会を設置し、サステナビリティ基本方針に基づき、マテリアリティへの取り組みを推進する経営体制をスタートさせました。また、2024年4月には同委員会の下にリスクマネジメント委員会を加え、当社グループにとって重要度の高いリスクを特定し、具体的な対応策の策定を進めています。
2024年度は、マテリアリティに対して設定した目標を達成するための取り組みを引き続き進めるとともに、マテリアリティの見直しと新たな中長期的な目標の設定を行います。
4.DXの推進
生産性や技術力の向上、顧客対応力の高度化を実現するため、DX推進体制を整備し、デジタル技術を活用したプロセス革新を推進します。
2023年度は、デジタル技術を活用した業務プロセス改革を推進する基盤を強化するため、⼯程の可視化やデータを活用した工程改善と中核人材となる「DX推進リーダー」の育成プログラムを開始しました。今後は、DX推進委員会を立ち上げ、長期ビジョン(ありたい姿)の実現に向けた課題解決のためのDX推進体制を整備するとともに、デジタル技術を活⽤した業務プロセス改⾰とDX人材の育成に継続的に取り組みます。
成長領域への取り組み
「環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング」の3分野を成長領域と定めて、様々な施策に取り組んでいます。
環境領域については、EV関連部品用工具の拡販やサーキュラーエコノミーに関連するビジネスモデルの構築、電池関係での新規事業開発を進めています。エレクトロニクス領域は、2023年度で追加投資を行った電子・半導体分野への拡大と次世代製品の開発に取り組んでいます。ウェルビーイング領域では注射針研削用砥石や医薬、化粧品分野に向けた装置の開発、食空間を彩る、形や風合いにこだわった食器の提供を進めています。
人的資本の強化
ノリタケグループの長期ビジョンの実現に向け、ノリタケでは事業戦略の実行に求められる人材像を再定義し、目指す人材ポートフォリオを定め、新たな人財戦略を打ち出しました。2024年度より、この人財戦略に沿って、採用・人材育成等における具体的な施策の立案・実行を開始しました。「目指すべき人材ポートフォリオ」の充足に向けて、現有人材の育成・強化に加え、新たな人材の確保にもこれまで以上に注力します。また、従業員エンゲージメントの向上を目指して、人事制度の改定、タレントマネジメントシステムの導入など、人的資本の強化を目指し、基盤整備を進めました。
資本収益性を意識した経営について
持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するためには、資本コストや資本収益性を意識した経営の実践が必要です。
第12次中期経営計画では、2024年度のROE(自己資本利益率)9%を目標に掲げ、株主資本コストを上回る収益の創出に向けた取り組みを進めてきました。2024年度からは事業別ROIC(投下資本利益率)の目標を設定し、さらに資本収益性を高める施策を推進するとともに、事業ポートフォリオの見直しによる経営資源の適切な配分を行っていきます。
PBR(株価純資産倍率)については、2023年度に大幅な改善がみられましたが、1倍を下回る状態が続いており、早期に改善が必要と認識しています。第12次中期経営計画で策定した成長領域への転換を進めます。また、政策保有株式の縮減による資本効率の向上やIR活動の強化を図っており、英文開示を含む情報開示の拡充にも取り組んでいます。今後も持続的な成長と企業価値向上を実現するために、資本コストや株価を意識した経営を実践していきます。
コーポレート・ガバナンスの強化について
コーポレート・ガバナンスの強化については、2023年度、取締役会の実効性向上に向けて、課題と認識している「資本コストを踏まえた事業ポートフォリオの見直し」、「長期戦略に基づく人的資本への投資・人財戦略の策定・遂行」、「リスクマネジメントの強化」に取り組みました。
「資本コストを踏まえた事業ポートフォリオの見直し」については、中期経営計画の進捗状況と事業ポートフォリオの推移を取締役会に定期的に報告しています。
「長期戦略に基づく人的資本への投資・人財戦略の策定・遂行」については、2030年の長期ビジョンに向けた事業戦略を実現するため、必要な人材像に照らした現状の「人材ポートフォリオ」を定量的に把握し、人的資本の開示を進めています。
「リスクマネジメントの強化」については、当社グループを取り巻くリスクの分析・評価を実施し、重要度の高いリスクの特定を行いました。今後は4月に設置したリスクマネジメント委員会において、重要度の高いリスクについて具体的な対応策を策定します。
役員報酬については、株式の保有を進めるとともに、業績の向上達成意欲と株主価値の増大への貢献意識を高めることを目的として、2024年度から年次交付型業績連動型株式報酬制度を導入しました。
これらの取り組みは全て取締役会において進捗報告や取り組みについての議論を行うとともに、適切かつ確実な遂行に努めています。
決算発表、IRミーティング、個別取材などでの株主との対話状況も定期的に取締役会にフィードバックすることで、経営に適切に反映し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋げます。
ステークホルダーの皆さまへ
ノリタケグループは、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営方針として位置付けております。2023年9月30日を基準日とする中間配当より、従来の配当方針である「長期にわたる安定的な配当」に、「通期の連結配当性向30%以上」を加えました。この配当方針に基づき、2023年度の期末配当につきましては、1株につき130円(中間配当と合わせて年間250円)としました。
また、当社株式の流動性の向上及び投資家層の拡大を目的に、2024年4月1日を効力発生日として、普通株式1株を2株に分割し、投資単位当たりの金額の引き下げを行いました。
ノリタケは創立120周年を機に、2024年7月に社名を「ノリタケ株式会社」へ変更いたしました。創立以来、当社はセラミックスに関連する技術を核として、自動車、鉄鋼から電子部品や電池材料まで、幅広い分野に製品を提供しています。この度の社名変更は広く皆さまに親しんでいただいているブランド名「ノリタケ(Noritake)」と社名を統一することで、さらなるブランド認知向上を図るとともに、長期ビジョン(ありたい姿)の実現に向けて、一層の事業拡大と企業価値向上に取り組むという決意の表明です。長期ビジョン「変化する社会の欠かせない推進役へ」の達成に向けて、冒頭に挙げた「会社のイノベーション」「新事業創出の種づくり」「組織風土改革」の3つの取り組みを着実に進めてまいります。
ノリタケグループは未来に向けて大きく動き出しました。株主様、お客様、お取引先様、従業員、地域社会など、ステークホルダーの皆さまの声を真摯に受け止めて、一歩一歩、着実に改革を進め、挑戦してまいります。今後も、引き続き、温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。