2026ENTRY

2025ENTRY

新しい材料を作る
SPECIAL
EPISODE
2

新しい材料を
作る

開発・技術本部 商品開発センター
電子材料開発グループ グループリーダー
2002年入社
Y.Y

熱意とアイデア、そして周囲を巻き込む力。
新しい電子ペーストを作る、開発者の挑戦。

「本当に作れるのか?」

「それをやる意味があるのか?」

新しい材料を使った電子ペーストを作りたい、というY.Yに対し、周囲はまず疑問を口にした。開発が成功する可能性や、ビジネスとしての将来性。その時点で見えていないことが、まだあまりに多かった。

ノリタケの主要製品のひとつである「電子ペースト」は、積層セラミックコンデンサなどの電子部品に使われる材料。それ自体はインクやペンキのように液状をしているが、最終的には高温で焼かれて固体になる。

金属やセラミックスの粉を樹脂の中に練り込んで作られるという製品の特性上、開発において「何の素材を組み合わせるか」「どう組み合わるか」が重要なポイントとなる。この電子ペーストを作り続けてきた歴史の中でノリタケが特に力を注いできたのが、セラミックスや金属に関する技術の追求。セラミックスを本業とするメーカーとして、長年の技術の蓄積が大きな強みとなってきた。

しかし一方で、それを混ぜる樹脂については、セラミックスのように高度な評価技術や解析技術を有しているわけではなく、長い間その状況は変わらなかった。

「どうして新しい樹脂の素材を試さないのかな?」
というのが、Y.Yが抱いた率直な疑問である。しかし普通の感覚からすると、ノリタケが新しい樹脂を使った電子ペーストを一から開発するのは、“畑違い”と考えるのが一般的だった。事実、そうした分野に強い樹脂メーカーは他に存在していて、専門的な知見を豊富に有している。

ただY.Yとしては、漠然としたものであったが「今のうちにこの問題に取り組まなければならない」という危機意識があり、自分なりに調べてみることにした。すると、次のようなことが分かってきた。

樹脂メーカーの製品の中心は、あくまで樹脂が主役の電子ペースト。一方、Y.Yがこれから作ろうとしているのは、「金属やセラミックスが主役でありながら樹脂が使われた電子ペースト」で、そうした製品は樹脂メーカーの全生産量のうち、1%にも満たないほどだった。

「この市場にねらいを定めれば勝算は十分にある」

そう確信した。

そこからの動きが速い。完全に社内のコンセンサスが得られる前に、新しい材料の開発案件として自治体のプロジェクトに応募。それが何と採用され、補助金がおりることになった。

それを受けて、樹脂の評価などを行う設備を新たに導入。それは、周囲の意識を変えるのに十分な行動だった。そしてこの時すでに立ち上がっていたのが、Y.Yをリーダーとする開発グループ。所属するメンバーたちはそれまで「本当にやるんですか?」と半信半疑の様子だったが、一連のY.Yの動きを見て気持ちを切り替えた。

実はY.Yの元々の専門は樹脂の分野ではない。開発において実務の中心を担っていくのは、樹脂の知見があるメンバーたちだ。Y.Yが方向を示し、全員の力で前に進む。彼らの気持ちにスイッチが入ったことで、開発は一気に進んだ。

Y.Yが所属する「開発・技術本部」とは別に、電子ペーストを製品として製造・販売する「電子ペースト事業部」がある。彼らとの協力体制も、重要なポイントだった。

「電子ペースト事業部のグループリーダーの方が中心になって、『Y.Yたちにやらせてあげてよ』と、私たちが開発しやすい雰囲気を作ってくださいました。営業担当の方が情報収集をしてくださったり、お客様である電子部品メーカーとの橋渡しをしてくださったり、さまざまな面で協力していただきました」

こうした後押しを受けてプロジェクトは加速。本格的な商品化を控えた現在も、事業部と一体となって開発を進めている。

Y.Yたちが開発を進めている電子ペーストは、主に自動車用の電子部品への使用を想定したもの。たとえば自動運転技術を実用化する場合、多くの電子部品が使われ、その一つひとつに高い信頼性が求められる。高温、高湿、衝撃に対する強さが重視されており、そのニーズはここにきてますます高まっている。

一方、車載部品の「樹脂化」という大きな流れにも注目が必要だ。自動車の燃費向上や環境への配慮から、従来のセラミック基板を樹脂基板に置き換える流れが進んでいる。併せて基板以外の電子部品についても樹脂を活用する流れが進んでいる。

そのひとつが、先述のセラミックコンデンサだ。コンデンサの一部(主に外部電極部分)に樹脂を使うことにより、従来のものよりも柔軟性が生まれ、衝撃に耐える力が強くなる。これは電極部分なので、「電気を通す」という性質も必要となる。柔軟性や耐久性に優れた樹脂でありながら電気を通す。さらに高熱や高湿にも耐える。そうした特殊なニーズに応えるのが、Y.Yたちが開発している電子ペーストなのだ。

しかし、Y.Yはどうしてそのニーズが拡大すると思ったのか。実はそこには彼の「学びのキャリア」が関係している。ノリタケに入社後、社会人学生として博士号を取得。さらに上司のすすめを受けて、経営学修士(MBA)の課程も修了している。そこで得た知識をもとに、いわばマーケティング的な視点で市場を分析した結果が生きている。

セラミックス製品を主体とするメーカーであっても、樹脂を活用した材料を開発することができる。そうした新しい挑戦を推奨する文化は、やはりノリタケという会社特有のものだ。ただし、中途半端な準備では挑戦を成功させることはできない。上司をはじめ、Y.Yの挑戦に対してクエスチョンを投げかけた人たちが真に伝えたかったのも、その部分だった。

「それで本当に競合に勝てるのか?」
と繰り返し問うことによって、徹底的に考えることをY.Yに求めた。質問への答えを探しながら考えを深めていく中で、当初立てた戦略がますます強固なものになっていく。上司が期待したことに、Y.Yとグループのメンバーたちは行動で応えた。

めまぐるしく変化する、電子部品の世界。独自の視点とアイデア、技術を組み合わせて未来を探る、開発者たちの挑戦に終わりはない。

※社員の所属部署は取材時のものです。

PROFILE

PROFILE

PROFILE

「自分で企画した商品を立ち上げたい」という目標を持ってノリタケに入社。開発・技術本部の研究開発センターで、商品化に向けた新技術の開発に取り組む。市場に広く必要とされる商品づくりをめざし、各事業部と連携して開発業務を行う。

PAGETOP